純米@大吟醸

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BTSに先人がいることを知る人はきっと少ない

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 世間一般的にBTSと言えば韓国のPOPミュージックのグループのことになるんだろう。防弾少年団という名前はどこにいったのかな。

 私にとってのBTSは二十年以上前からアメリカにいる。名前をビルトゥ トゥ スピルといってBuilt to Spillと書く。少女漫画に出てきそうな、ヒゲなし腕毛すね毛なしのツルツル男ではない。ツルッとしてはいるけど、それはフロントマンのダンの頭。ロックバンドなのに禿げている、しかもデビュー時から見た目はおじさん。ん?文法がおかしいか。

 私のBTSアメリカのアイダホ州ボイジーという、日本人にはまったく馴染みのない街から出たバンドだ。拠点はシアトルだったかな。こんなルックスのバンドは日本ではまず紹介されないし、人気は出ない。そんなバンドをなぜ日本に住む日本人の私が興味をもったのか。

 出会いは1998年だった。ベン フォールズ  ファイブ(Ben Folds Five)の未発表曲集『ネイキッド ベイビー フォトズ(Naked Baby Photos)』に収録されていたツイン フォールズ(Twin falls)という曲を聴いてなんだこりゃと思った。ベン フォールズの曲っぽくない、だけど心をジワっと浸していくような歌。ライナーで確かめると、Built to Spillをカバーしていることがわかった。そのライナーがひどかった。

アメリカ西海岸、シアトルをベースに活動する宅録系カルト・ギター・バンド、ビルトトゥスピルのカバー

 あ、うん。カルト的な人気なのはわかる。宅録……かなぁ。時代が宅録万歳!だったし仕方ないか。こんな感じのあっているようであっていないような。今より比較的まっとうであった私は、どんな変態系のバンドなのかとワクワクしたと思う。

 当時はSpotifyYouTubeもない。音楽を聴きたければラジオを聴くか、タワレコHMVに走らないとならなかった。でもTwin fallsが入っているアルバム『There's nothing wrong with love(ゼア イズ ノッシング ロング ウィズ ラブ)』が東京のCD屋で見つからない。当時は渋谷系が全盛期だったし、大都会東京でも仕方がなかった。

 偶然にも、この夏にはニューヨークに行った。ついでだからCDを探す。この時はまだまだアメリカ人もCDを聴いていたから、マンハッタンにお店は何軒もあった。いくつか巡る間に、ワールド トレード センターの中にあったBoarders(ボーダーズ)というお店で発見したのを覚えてる。このお店も十年くらい前に破綻して、確かBarns and Noble(バーンズ アンド ノーブル)が引き継いでいたはず。

 そんなこんなで手に入れたアルバムは何回も聴いた。バンドの見た目とは決して結びつかない美しい声とメロディ、曲の始まり方と終わり方、乱れ方、いいな。一曲目のIn the morning(イン ザ モーニング)を朝聴くと、爽快な気分になれた。

 宅録と言われているわりには家を出て、ライブを精力的に行っているようで、ツアーの日程がたくさん出ている。いつかライブを観てみたい。そう思っても日本に来るようなバンドではない。悶々とするまま、時には忘れそうになって、何年もの月日が経った。

 そんな、私に最大のチャンスが訪れる。

 2005年9月、テキサス州オースティン。Austin City Limits Music Festival(オースティン シティ リミッツ ミュージック フェスティバル)に行く機会があった。ラインナップにはBTSがいて、二番目に大きなステージに登場するらしい。すごいチャンスだ。見逃す訳にはいかない。

 にも関わらず、突発した事情により「遠くからモニターを見ながら音だけを聴く」という中途半端な体験になってしまったのです。今思うとありえない。なんてバカだったんだと自分を責める。でも生で聴くBTSは音が分厚く、ダグのボーカルが爽やかに風に乗ってきたことは確認できた。会場もちゃんと盛り上がっていたし、観客の中にはギャルがいる。ハゲがフロントマンのバンドにキャミソールのギャル。ロックバンドについて見た目だけを重視しない、アメリカの聴衆は好き。

 もともとおじさんだった彼らのこと。私がおばさんになった今はもうおじいさんに片足を突っ込んでいるはず。波平さんより年上のはず。新譜やライブの頻度も下がるだろうし、早く観に行かないと観られなくなってしまう。コロナが終わったらすぐにでも行かないと。

 おおざっぱすぎるけど、これが私のBTSとの出会いと進捗。音楽や雰囲気はインディそのものなんだけど、長い間ずっとワーナーのアーティストだった。アルバムを出すよとお知らせがあるたびに、バンドメンバーが減ったり増えたりしてるのを笑ってる。ダグが固定で、それ以外は気の合う仲間とやってるのかな。

 今時、音楽をジャンル分けする人はいないだろうけど、彼らは一応オルタナティブロックの人。オルタナ自体がなんだろう?って人の方が多いかな。