純米@大吟醸

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55 & 115 ローレライとバッハラッハの思い出

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ローレライは雪

ライン川沿いを電車で進んだ時の日記には「雪雪雪」と書かれている。スペインではタンクトップが欲しかったのに、ドイツは雪。すごい気候の変化だ。そんな寒空の下、この路線ではローレライの岩という物を見ておきたかった。有名だからだ。

 もしかしたらセイレーンの話と混同していたかもしれない。だけどこの頃、ラルク アン シエルが出したアルバムの中に『ローレライ』という曲があった。最初の英語はアレだけど、それ以外はすごくかっこいい曲。だから私はこの名称を知っていた。

 実際にその地に来ると、どれだからわからなかった(笑)それとライン川のことももっと雄大だと思っていた。川幅がもっとある感じ。だけど、そこまで幅は広くなく、ゆったりした水の流れから深さはあるんだろうなと想像した。ドナウと間違えていたのかもしれない。

 両側には低い山があった。丘の方が正しいかも。その山は岩っぽくて、どれも似ていて、ローレライに商業的な看板が掲げられてはいなかった。朝買ったイチゴを食べながら、ずっと岩を眺めていた。春ならば緑いっぱいの美しい景色が見られるのだろう。

「あれがローレライよ」

 近くの席に座っていた女性が教えてくれた。見にくる人があまりに多いのだと思う。おかげできちんと見ることができて、お礼にイチゴを一緒に食べた。

「今年初めてのイチゴだわ」

女性はそう言って喜んでくれた。グーグルマップがある時代だったら、この方とは出会えなかった。思い出すといいなと思う。

バッハラッハの古城のユースホステル

 ライン川沿いの小高い山には、その頂上付近に小さな古いお城が建っていた。その時、私たちもそのうちのどれかを目指していた。どこかで誰かに聞いていたのだ。この辺りにはドイツ国内でも人気が高い、古城のユースホステルがあるという話を。電話をして空きを聞いてみたら「大丈夫だよ!待ってるね!」と気さくで適当な感じだったので、不安になった。こういうホテルは少なくはなくて、少し不安になったものだけど、大都市でなければオフシーズンはこんなものだと学んでいた。

 バッハラッハという、一度聞いたら忘れない名前の街。ポツンと一軒家の調査中に通りそうな小さな街だったのだけど、ここがまたとても素敵だった。日記にも「花があって素敵」とだと書いている。お城をユースホステルにしてしまったのだってかっこいい。古城に泊まるなんてワクワクしない訳がない。

 そしておお!っとなった。現代の言葉で言うならOMGだ。さっき見ていた頂上付近に建つお城たち。そこにたどり着くためにはものすごく長い階段を登らないことは、近くまで来ないと気づけなかった(笑)しかも、その階段は手でカットしたレンガを幼稚園児が手でつなげたようなデコボコ斜めのオンパレード。幅も狭い。絵に描いたら、日本昔ばなしみたいな絵になりそうだ。若くて荷物もコンパクトな私たちはいいけど、登れない人はいないのか。「エスカレーターをつけろ」といったクレームが出ないところがヨーロッパだなと思っていた。業者の納品の方とかはどうするんだろう。

 私たちは予定にない山登りをした。入口に着く頃には日が落ちそうになっていた。でも山の上からの眺めはいい。そして、ユースホステルも居心地が良さそうだった。電話に出たフレンドリーなスタッフの方が受付をしてくれたのだけど、ビバリーヒルズのブランドンみたいだったと日記に書かれている。

お城に泊まる

 外観はお城だけど、中は古城感を活かしてきれいに整備されていた。お城の中は静かだった。部屋まではユースの方が部屋まで案内してくれた。誰かにオススメされたり評判がいいユースホステルに数軒泊まったけど、部屋に案内されたのは初めて。しかもおじさまが手にしているのはカンテラだった。今思えば演出だ。通路には非常灯しかなくて、つまり真っ暗。カンテラの明かりだけが頼りだった。ホグワーツもびっくりな、中世の(たぶん)生活を思わぬところで体験することができた。

 私はワクワクしていた。右を見ても左を見ても暗い。そして前のめりで派手に転んだ。おじさまが「今言おうとしたのに」とつぶやく。段差があることに気づけなかった。自ら爆笑。成人なのにと恥ずかしかった。

 部屋も快適だった。この時はドミトリーだったのだけど、シャワーもトイレも付いているタイプで、部屋には私たち以外いない。というか、ここに来てから他にお客がいる気配を感じていなかった。季節外れでお客がいないのかもしれない。それかまた他の方とは離した部屋にしてれているのだ。ドイツの人が旅行者に対して親切なことはベルリンで知っていた。こういう配慮が誰でもできるのはいいなと思った。 

 窓からライン川が見える。月の光で小さく光っているだけで、周りは闇でおどろおどろしい。これならローレライの伝説が生まれた理由もわかる。あと、窓の外には雪。友達は飲みかけの牛乳パックをその雪に埋めて冷たくしていた気がする。

 静かな夜にたっぷりと眠って、朝ご飯を食べに行くとビックリした。結構人がいた。家族連れもいる。ホテル内にはまったく音がしなかったのに、全部でどれくらいの部屋があるのだろう。

 朝ご飯もおいしかった。ドイツの朝ご飯は好きだなぁ。ハム、チーズ、卵、パンのよくある組み合わせなのにひとつひとつの味が好み。ソーセージ、あとどこで食べてもチーズがすごくおいしい。日本で食べるのとクオリティが違っていつでも驚いた。あと久しぶりのカイザーロール。思い出すだけで食べたくなってしまった。

 ライン川下りは絶対にまた行こう。ローレライの麓には道路があったので、今度はドライブしたい。その方がいろいろ寄り道できるし、発見もありそうだ。

 

 今日の場所は大吟醸トラベルマップの55番と115番。

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