純米@大吟醸

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53:バルセロナの思い出

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 バルセロナにはなんの思い入れもなかった。

 強いて言うならバルセロナオリンピック。金メダルを獲った中学生の岩崎恭子さんがたった十四年の人生の中で「一番うれしい」と言い、有森裕子さんと森下広一さんがなんとかの丘を爆走したあのクソ暑そうなオリンピック。

 ただ、いざ街を歩いてみるとオリンピックのオの字もない。あと平和。

「スペインのスリはイタリアのコソ泥と違って暴力的だから気をつけなさい」

と言われたから気をつけていたのに。

加山雄三さんなヨットハーバー

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 海の方に向かって歩くとおしゃれな港感が濃くなって、頭ひたすら加山雄三さんが浮かんでた。

ふたりを〜 夕やみが〜〜〜〜〜〜♪

口ずさみたくもなる。日記にはパイナップルの木がたくさん植わっていたとある。港にはたくさんのヨットが停泊していて、暑くてタンクトップが欲しかった。前日までいたマドリードとは気温が全然違うから、本当に驚いた。

ガウディの公園で社会科見学

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 私はバルセロナにもたいして興味がなく、超有名なガウディもぼんやりしか知らなかった。「あの派手なトカゲの人」くらいの知識。でも、バルセロナの街にあるこの人の作品を見るうちに、「この人はなぜこんな物を作ってしまったのだろう」と思うようになった。

 自分が死んだ遥か先の未来。自分のトカゲを地元の子供達が囲み先生がレクチャーするなんて、たぶんガウディさんは想像していなかった。彼はアーティストというより免許を持った建築家だったような。真面目に建築のお仕事をしている途中、息抜きがてらシャレで作ったのではないかな?と、勝手に想像したりする。

 だけどガウディのアパートを見る頃には、この奇抜な建造物が街に溶け込んでることをすごいと思い始めていた。ティムバートンの映画のセットみたい。そんな物がいわゆるヨーロッパの住宅と並んで建っていることが意味不明だった。この辺りはそんな陽気な土地だっただろうかと何度も思った。

サグラダファミリアでフィルム落下

 当然、ガウディのもうひとつの有名な建造物であるサグラダファミリアにも行った。私はこの超有名な未完成の教会にも興味がないどころか知らなくて、前日に「明日はサグラダファミリア行くよ」と言われた時に

「へ?桜田ファミリー?」

と言ってしまった。真顔中の真顔で。

 その時はホテルのラウンジかカフェかにいたものだから、たまたま近くに座ってた日本人のおじさまにクスッと笑われてしまったのを覚えてる。「桜田ファミリーっていいね〜」と言われてしまい、なかなか恥ずかしかった。サグラダファミリアスペイン語でholy familyを意味することを誰も教えてくれなかったもの、仕方がない。

 塔の上には階段で上がった。螺旋階段で幅が狭い。確か上りも下りも同じ階段だった気がする。観光客の間で「あら、すみませんね」とか「がんばって」みたいな朗らかなやりとりがあった気も。こういうのいいなと思った。

 そんな塔の中で忘れられないことがある。結構上まで登った頃、私の前を歩いていた外国人の子がカメラのフィルムを落としてしまったのだ。たぶん同世代。フィルムの入れ替え作業でもしれいたのか。もはや過去の遺物である、小さい筒型のフィルム。コロコロ階段を転がって、やがて螺旋階段の真ん中の真っ黒な空間に吸い込まれ、フィルムは一番下まで落ちていった。

 カン、カン、カラ〜〜〜〜ン

 一部始終を見ていたのは、私を含めて四人くらい。ダース・ベイダーに切り落とされたルークの腕が吸い込まれていった、あのシーンに激似だった。全員一言も発することができずにその光景を見届けた後、当の本人が「Oh- No」と嘆いたのを合図に、皆で笑った。

 最上階までたどり着いて、外に出るととても静かで心地の良い風が吹いていた。オレンジ色した屋根の家が並ぶ景色も素敵。それでも私のサグラダファミリアの思い出は、「桜田家」と「落ちていくフィルム」。あのフィルムは何百年か後に旧文明の遺産として発見されたりするのかな?と考えたりもした。

 何気に思い出がいっぱいなバルセロナ。また行っても、サグラダファミリアにはまた歩いて登ると思う。

 

 スペインの人は今のところ嫌な人はいない。みんな陽気だな

 わざわざ日記に書かれた私のスペイン人像。パリでの対人の経験から、会う人がどんな感じだったかを記録するようになっていたらしい(笑)

 今日の場所は、大吟醸トラベルマップの53番。

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