純米@大吟醸

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人生で二回、私に起きたBitter Sweet Symphonyな瞬間

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 こないだのフジロックの配信楽しかった。音楽がきっかけて知り合った友達と一緒にいたので、ビールを飲みながら、思い出話と共に鑑賞した。

 友達が「そういえば、アーバンヒムスのジャケの公園行ったわ」と言い出した。そういうの好き。その時は「いいな〜」と返したんだけど、後日再びジャケを見て思った。上のインスタリンクにあるのがそれ。

 Urban Hymns(アーバンヒムス)とは、九十年代にイギリスのロックバンドであるThe Verve(ザ ヴァーヴ)が出した名作。それはもう素晴らしいアルバムなんだけど、けどね。“アーバンヒムスの公園”と言ったって、そこら辺でもわからなくない?

 まぁ、いいや。

 このアルバムにはBitter Sweet Symphony(ビター スウィート シンフォニー)というヒット曲が収録されている。The Rolling Stones(ザ ローリング ストーンズ)のThe Last Time(ザ ラスト タイム)をサンプリングしたとかでいろいろあったらしいけど、何度聴いても微塵も感じない。私だけ?それにBitter Sweet Symphonyの方がずっといい。

 そんなBitter Sweet Symphonyにまつわる、私の忘れられない体験をふたつ。

 

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 最初は、サマソニで観たヴァーヴのライブのこと。なんと2008年、12年も前の8月だった。観客が撮影した動画がアップされているんだけど、しょっちゅう削除されるから検索してみて。

 ヴァーヴはアルバムが売れた時には来日してなくて、バンドとしてはこれが日本初公演だった。だから、お客の興奮がすごくて。どの曲もイントロが流れるたびに、当時の千葉マリンが感動のうめき声でいっぱいになった。

 イントロ開始からドラムが入るまでのお客の手がすごかった。自殺の名所の断崖絶壁で海から突き出るという無数の手のイメージ。これを見て、リチャードがうんうん喜んで、タバコをどこかにやって、猪木のダーみたいなポーズして、エア ヴァイオリンして、ヤンキー座りして歌が始まる。日本人のデタラメ英語の合唱も始まる。

 ボーカルのリチャード アッシュクロフトは言うことは言う人だしって当時のロックバンドのフロントマンはたいていそうか。威勢が良過ぎる感じがあったから、もしかしたらライブは上手じゃなかったりしてと思うこともあった。だけど、生のリチャードはすごくお腹から出てる声で、お客を煽ったり楽しませようとする感じがかっこよかった。

 曲の間、例の手は全然下がらず、ステージを腕の隙間から見るのが大変だった。いいライブだった。もちろんヴァーヴもリチャードもあれっきり観ていないから、余計に思い出が美しくなる。

 もうひとつのBitter Sweet体験はそれより前のことだ。

 場所はニューヨークのマンハッタン。ミッドタウン付近の混んでる道路だった。エンジン音もクラクションも人の大声もギャーギャーうるさい中で、一台のオープンカーがこのイギリスバンドの曲を大音量でかけていた。

 晴れていたから辺りはオレンジ色に染まってて、光がいっぱい。交差点沿いのビルや道路はフワっと柔らかい空間に見えた。それはもう天使が舞ってるみたいな感じ。フランダースの犬のワンシーンのようだった。

 これもあって、いつ何度聴いても古くさい感じがしない。90年代の終わりに生まれた曲を10年後に聴いて、今さらに10年が経った。次の10年、20年もきっと余裕で名曲として誰かが聴いているんだろう。そんなことを思うとうれしくなる。