純米@大吟醸

美しいと楽しい、旅と音楽と日々のこと。

41:ブリュッセルの思い出

 飛行機の乗り換えだけで通った街に、陸路で戻ってきた。オランダでゴッホを見てから電車に乗って、夕ご飯の時にはブリュッセルの街を散策していたから三、四時間で着いたのか。インターシティが到着した駅はとてつもなく街のど真ん中にあった気がする。

 ベルギーは国土が確か四国くらいしかない国で、どこに行くにも二時間くらいらしい。だからベルギー人には転勤がないとか。日本で仕事のために家族全員で引っ越したり、単身赴任をするのをすごいと言っていた。

 国土の小ささと駅を出てすぐ繁華街があることの関係性はわからない。とにかく、イメージはブリュッセル駅が原宿駅みたいなイメージ。外に出ると、すぐに観光名所があった。

ワッフルとムール貝

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 夜に着いた私たちはホテルに荷物を置くとすぐに街に出た。素敵な場所は明日でいい。とにかくお腹が空いていた。おそらくグランプラスの方に行って、気になるお店に入ったのだと思う。私は本当に何の予習もしない人。食べ物やその地域の名産は友達が調べるのが好きだったので、いつも調べてもらっていた。

 友達が選んだメニューはムール貝の白ワイン蒸し。バケツのようなお鍋で出てくるのがおもしろいし、その前に量がすごい。本当にバケツ。それでも確かふたり分だったと思う。絵には描かれていないけど当然ポテトが一緒に出てきて、オランダで食べた物と同じようにホクホクだった。私は美味しそうに見えたブイヤベースを追加。海は見えないけど海の幸がおいしい素敵な街。この頃はそこまでベルギービールブランディングされてなくて、ビールに合う料理なんて話題にならなかったと思う。ベルギーは食の街として知られていたくらい。ソーセージやお肉もおいしいことを知ったのはその後だから、やっぱりまた行かないと。

 お腹いっぱい食べた後は、街を散策。この街も該当がオレンジ色をしていてしっとりきれい。雨で石畳が濡れている様子がやっぱり好きだった。

 その時、まだ開いているカフェからお姉さんが微笑んでいるのが見えた。カフェへの入口とは別にテイクアウトの窓口があるお店。

「デザートにワッフルはどう?」

 素敵。銀座にマネケンがあるおかげで、私もベルギー=ワッフルは知っていた。それにヨーロッパに来る時に乗ったサベナ ベルギー航空でもワッフルが出たし。私たちは「もちろん!」とふたつテイクアウトに作ってもらった。

 平たいお皿の上に乗ったワッフル。でも私が知っているベルギーワッフルと違って四角だった。その上にたっぷりの生クリーム。当時は知らなかったけど、これがブリュッセルスタイルのベルギーワッフルらしい。マネケンのはリエージュという街のスタイル。他にあまりおいしくないらしいアントワープスタイルもあるのだそうだけど、これは私も食べたことがない。

 ブリュッセルスタイルのワッフルは本当においしかった。カリカリの表面に中はしっとり。そしてサイズが大きい。マネケンの二個分強はあったな。生地そのものは甘くなく、乗せられたたっぷりの生クリームで甘みを追加するのが楽しい。お姉さんと雑談をしながら、お店の前で平らげてしまった。

 私の本場のワッフル体験は素敵な思い出だ。

干からびたコンタクトレンズ

 移動の多い旅は刺激に満ちていてアドレナリンが出っ放しなのだけど、それゆえ大失敗をすることがある。オランダでは十万円弱のユーレイルパスを引きちぎったし、今回のコンタクトレンズ干からび事件もそうだ。

 私は目がそこまで悪くはないので日本ではそれほど視力矯正はしないのだけど、鉄道の旅では必ずしてた。駅名、プラットフォーム案内、時刻表のパラパラが見えないから。だけど夜は外す。興奮のまま擦り洗いも適当に、ある朝起きたら持ってきた洗浄液の蓋にカピカピになったコンタクトがくっついていた。この時は使い捨てでないレンズを使っていた気もする。つまり、私はコンタクトレンズの片側を一日使うことができなかった。

(浸しておけば戻るんじゃない?)

 私は楽観的だ。まったく見えない訳ではないのもあるけど、替えのないコンタクトがまずい目に遭っていても動じなかった。そして、ベルギーに着いた翌朝、コンタクトは復活していた。すごい。何もなかったかのように目に入れ、街歩きに出た。何事も諦めてはいけないということを、私は学んだ。

国立美術館と漫画美術館

「100BFで安い」と日記に書いてある。そうだ、この頃はユーロはまだ小切手で出回っていたくらいで、紙幣や硬貨は出回っていなかった。ベルギーはベルギーフラン。あとサンチーム。懐かしいー。

 当時はこの小国のなかでオランダ語を話す人とフランス語を話す人での精神的な小競り合いがあることなんて知らなかったけど、文化的な物事を、特に若者に、安く触れられる機会を作る国はすごいと思っていた。当時の日本は学割がそんなになかった。例えば、携帯料金でauが学割を作ったのはここからさらに数年後のこと。いろいろな所で社会人と同じ料金を払わないとならなかった。だからヨーロッパはすごい。

 特に何の展示物があったのかは忘れたけど、有名な画家の作品がたくさん所蔵されていた。印象が薄いのは、この頃には既にヨーロッパの美術にうんざりしていたからだと思う。

 ヨーロッパで誇らしげに飾られているのは、ほとんどイエス様の絵。痩せ痩けて目が虚ろなイエス様、磔にされて瀕死のイエス様、頭に刺さったイバラの冠から血を流すイエス様……。ヨーロッパ人はこの絵を見て、自分たちの精神的な起源のようなものでも感じるのだろうか。私は不気味さの方を強く感じてしまって、ひどいや悲しいという感情すら湧いてこなかった。

グランプラス

 ここは圧巻だった。世界で最も美しい広場なのではないかと思う。歩きながら建物と建物の間に明るい場所が見えた時、光り輝いているように見えた。四、五階建てくらい建物がグルリと広場を囲んでいるのだけど、建物の装飾が繊細で美しかった。一番上に塔があるスタイル。

 一見お店が入っているようには見えない伝統的な建物なのに、一番下の階には有名なメーカーが入っていたりする。街の景観を崩さないようにする京都みたいな雰囲気。この広場ではさまざまな催し物が開かれるようで、今度はそういう時に訪れてみたいと思った。

 

 大人になってベルギー人とあったり、ベルギーの物事をもっと知るようになったし、改めてじっくり旅したい。アントワープもゲントも電車で通過しただけだし、丸いワッフルがあるリエージュにも行ってみないとと思っている。

 

 今日の場所は、大吟醸トラベルマップの41番。

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