純米@大吟醸

美しいと楽しい、旅と音楽と日々のこと。

73:アリゾナで見た夕暮れの思い出

 アリゾナ州には“グランドキャニオンの州”というニックネームがあるのだけど、そこまで認識されていないように感じる。確か、日本人のグランドキャニオンへの行き方はラスベガスからが多かったはず。

 私はサソリに刺された後、友人とフェニックスからグランドキャニオンに向かった。とにかく北に向かって、セドナフラッグスタッフ経由で朝は四時間くらいで着いたと思う。その時の道が楽しかったらしく、いろいろ落書きを残していたので書いておく。

 ほとんど対向車もいない道を走っている中で惹かれたものがいくつかあった。まずは気候の変化。乾いた土に低木が生える地帯からサボテン地帯、さらにはサボテンすら見えなくなる土地へと移っていく様子がおもしろかった。背が高い柱サボテンとその脇に背が低いウチワサボテン。あまりにたくさん生えてるから、一番最後に見えたサボテンを勝手に『最後のサボテン』と名付けてみた。基本的に単調な道だから、わざと何かをしていないと眠くなる。

 次はバッファローバッファローマンでしか知らないバッファローがたくさん生きて存在していた。野生なのか飼われているのかは不明。飼ってどうするんだろう。食べるのかな。ほとんど動いておらず、静止している姿が遠目に黒い小山に見えた。強そうでかっこいい。

 山火事の跡を抜ける間は寒気がした。アメリカの山火事は日本のニュースでよく観る。私が見たのは鎮火後。道路の両脇が黒と灰色に染まっていた。窓を閉めていても焦げた匂いが漂ってくる。燃えた範囲がずっと続いていたこともあって、まるで世界の終わりのような感じがした。

 フラッグスタッフまで行くと、急に“グランドキャニオンに行くぜ”感が高まるのはおもしろかった。これから行く車、行ってきた車、あとセスナ機。ここまで来るとクソ暑いフェニックスとは全然違う気候になって、長袖を羽織ってた。サソリの文鎮を見つけたガソリンスタンドのところ。ガソリンスタンド他のお店もそんなになかった気がする。だから余計に人々が集まっている感じが楽しかった。

 それと格別だったのは夕暮れ。都市部を離れたアメリカの道路は、真っ暗で街灯もろくになかった気がする。自分の車のライトだけが頼り。たまに動物の目も光ってドキッとした。でも遠くに広がる空を見たらすごかった。パタゴニアのロゴみたいな美しいグラデーション。真っ黒な木々の後ろに、色が層になった空と星。汚い絵だけど描いておいてよかったな。全然忘れられないし、また見たくてたまらない。

 残念だったのは、この辺りに生息していると聞くコヨーテを見ず、鳴き声も聞かなかったこと。珍しいから見てみたかった。なんとなくだけど、私はこんな風に車でどんどん行くのが好きみたい。

今日の場所は、Google My Map 大吟醸トラベル の73番。