純米@大吟醸

美しいと楽しい、旅と音楽と日々のこと。

73:グランドキャニオンの谷底の思い出

  • 静寂
  • 谷底へ
  • 日本人ツアーガイド

 グランドキャニオンは広い。

 お金を払う入場ゲートに着いただけではあの崖の気配すらない。国立公園という物は本当に広くて大きいから、甘くみると大変。グランドキャニオンの場合は少し進むと小さな駐車場があって崖を眺められて、さらに行くと皆が集まるスポットと“これぞグランドキャニオン”な展望台があった気がする。地理の教科書に載ってた写真の展望台。

 とても静かだった。それが実際に行ってみて一番驚いたこと。観光客はハイテンションで騒がしいものだけど、あの景色を見たらそうなっても仕方ない。鷲なのか鷹なのか。谷の上を飛ぶ立派な鳥が羽ばたく音が聞こえるくらいだった。

 いろいろな角度から何枚も写真を撮って、ずっと下まで縞の地層を眺めながら一息ついたところで突然思った。下に降りたらどうなるのだろう。展望台からも谷の奥の奥の小川と、観光客を乗せた馬やしっかりと装備したキャンパーが上り下りしているのが見えていた。

 それで下りてみた。感想は「疲れた」だったらしい。

 その時の装いは確かコンバースに普通のジーンズで、水も500mlペットボトルを1本程度しか持ってなかった。道は舗装されていないハイキングコースで、道幅は人間ふたりがすれ違いできるくらいな場所が多かった。普通に歩ける。たまに視線を感じて茂みに目をやると、鹿が私を見つめてた。木の実を食べてたところを邪魔してしまったみたい。

 一時間くらい下った。その間は、崖の上よりもっと静かだった。無音の音がするくらい。崖のてっぺんは遥か上にあって、私は谷の中。思っていたより多くのキャンパーがひとりで登ってくる。すれ違うたびにタフだなと思った。ひとりだと寂しそう。それと、もうひとつ思った。

 死んでも誰もわからないような……。

 そんなことない。ちゃんとレンジャーが見張っていて、私のような適切な装備をしていない人が来ると「この先はダメ」と通してくれない。半袖短パン、登山靴に大きいバックパック、寝袋、水何リットルみたいな本格的なアウトドアの装いでないと。谷底にある川のほとりに泊まれる場所があるらしい。アウトドア派の方なら泊まってみたいだろうな。

 グランドキャニオンでもう一つ覚えていることに、日本人のツアーガイドのおじさまがある。会ったのは、ロッジみたいな場所で休んで時。おじさまより先に日本のおばさまの団体がガヤガヤとやってきて、お店の中に吸い込まれていった。

「アイス、アイス。アイスを食べなくちゃ!」

 今思うと、なんでアイスだったのだろう。グランドキャニオンは暑い印象はないのだけど。乗ってきたバスが暑かったのかな?思い返すと、この時の日本のおばさまの団体はコロナ前に東京にワンサカいた某国の方々と大差ない。ツアーガイドのおじさまが引き連れていたのは彼女たちで、おばさまたちを放牧すると喫煙コーナーで一服していた。ツアーガイドは大変だと愚痴をこぼす。

「ラスベガスからずっとこのノリなんだよ〜(笑)君たちはどこから来たの」
「フェニックスです」
「マジで?」

 このガイドさんの反応でフェニックスから来る人がそれほどいないことを悟った。そもそもフェニックスでそんなに日本人に会わないから、たぶん正しいんだろう。今度はラスベガスから行ってみたい。

 グランドキャニオンの入園チケットは確か七日間有効だった。本来は、そのくらいワイルドに楽しむものなのだろう。何かをきっかけに私がアウトドア派になったら、そういう滞在をするのもいいかもしれない。

今日の場所は、Google My Map 大吟醸トラベル の75番。