100:モントリオールは苦笑いの思い出
- フランス語の地域
- アップルパイを買う
- 変な日本語を許さない
とはいえモントリオールはバイリンガルの街だ。若い子はもちろん、おじいさんもフランス語と英語を器用に話す。街の標識や看板も食品のパッケージもまずはフランス語、次に英語と必ず二か国語表記になっている。日本で英語も添えてデザインするのとは違うから、こういう地域の仕事はしてみたい。
そんな街で、私はまさかの『ショソン オ ポム』事件に遭遇する。
モントリオールは緯度が青森くらいの豪雪地帯。シンシンと雪が降る午後のことだ。私はプラトーと呼ばれる町を歩いていた。ここにはモントリオール市内で特にフランス語を話す人が多く住むエリアだ。私はそこに友人がいて、ある時ホームパーティーをすることになり、近くのケーキ屋さんへデザートを買いに行ったのだ。カランとドアの音が鳴るような、小さなお店。
「ボンジュール」
出てきたのは、中学生くらいの女の子。親のお手伝いをしてるのかな、偉いな、なんて思いながらガラスケースの中から買う物を決めた。
「アップルパイをください」
観光都市でもあるモントリオールの人は、話す人に合わせて英語とフランス語を使い分けてくれる。このくらいフランス語話せよと言われるとそうなんだけど、私はフレンドリーなカナダ人に甘えて英語を使ってた。後に続く会話が理解できないのも理由のひとつ。
でも、店番の中学生。
「これはショソン オ ポムでしょ!」
といきなりキレた(笑)
怖っ(笑)
わかっとるわ(怒)
と、こちらもキレそうになったけど大人だからやめた。白人系で普通に整った顔立ちの女の子なのに、このひと言で意地悪で柔軟性に欠けた人という印象になってしまった。ムカつくというより急なキレ方に苦笑いを我慢するのに必死。
フランス語を話す人々は、フランス語に対するプライドが高いと思う。「私たちが話す世界一美しい言葉を変に使うな」と思ってるんだろうな。これは素晴らしいことだ。それに比べて日本人はなんと寛容なことでしょう。外国人のヘタクソな日本語を必死に理解して、身振り手振りと筆談で伝えようとしているんだから。
私はフランス人にボンジュールの発音が違うと言われたことがある。「その発音ではボンジュールにならない」と結構うるさくしつこく言われた。私はNOと言えない日本人ではないけれど、それでも「そんなに言われる必要ある?」でと思ってた。なんなら話してるだけでも偉いと思ってほしい。
こんなことがあってから、私は彼らのヘタクソな「コニーチワ」を許さない。
「コニーチワじゃなくて、こんにちはだよ」
Hを発音できないおじさん世代の「イヤク」には
「イヤクじゃなくて、ヒャク(100)だよ」
と真顔で言う。だって、私にも日本語にプライドをもっている。
今日の場所は、Google My Map 大吟醸トラベル の100番。