97：ローレンシャンの紅葉の思い出

紅葉の森
フォード車のテレビCM
ガソリン切れ

　ローレンシャンはモントリオールの北西にあるリゾート地。モン=トロンブラン、モントランブラン、カタカナ表記がどれだかわからないキレイな丘陵地帯にある。ここは紅葉がとても有名で、それを見たくて私も行った。

　モントリオールから車で二時間くらいだった。道はとても簡単で15か117をずっと北に向かっただけ。たぶんナビも使わなかった。途中、ティムホートンズに寄ったり、あーティムビッツ食べたい、とにかくそんな感じでのんびり延々と車を走らせた。

　道中、他に車はたいしていなかった。カナダは田舎だし、平日に都市部と反対方向へ向かったのだから当たり前か。とにかくそんな時間。森が深くなるにつれて、すごい景色が目の前に現れた。

　長く続く道路、その両脇に生えるたくさんの大きな木、カサカサ揺れる大きな葉。日本にもこういう場所はあるのかな。そんなカナダのダイナミックな自然が、見渡す限りすべて黄色と濃いオレンジに染まっていた。木漏れ日とそよ風まで吹いていて、気分は最高。その時、猛烈に90年代に流れていたCMを思い出した。

♪This is my Ford---------
♪This is my
♪This is my
♪This is my
♪This is my Ford----------

　おじさんがたった一文を高らかに歌い上げる車のフォードのCM。以外なことに動画が見つからない。車種は忘れた。四季に合わせて景色がアップデートされる、『そうだ、京都行こう』みたいなCMだったはず。その中に、燃えるような紅葉の森を抜けていくバージョンがあったと思う。目の前の景色はそのCMにそっくりだった。

　あのCMの中にいるみたい！

　とかなり興奮したことを覚えている。辺りは静かで木のいい匂いがした。路肩が広い場所に車を止めて、人っ子一人いない瞬間の道路を写真に撮ったりして楽しんだ。

　しかし、美しい時間とは長く続かないもので、この美しい小旅行はすぐに珍道中に変わってしまった。景色に夢中になって余裕をかましていたから、ガソリンがかなり減っていることに気づかなかった。そして急に、次のガソリンスタンドまでもってくれるかと心配になる。

　車の往来が少なく民家もない、だけど観光のバスや車は通るという微妙な場所。ガソリンスタンドには注意しながら進むべきだった。気分的には「ちょっとモントリオールの郊外まで来た」つもりだったけど、所要時間二時間ということは200kmくらい走ってる。東京からだとかなり遠くまで行ける。カナダは国土が広いからか、その辺の感覚が麻痺していたみたい。

　無事給油はできたけど、いつ思い出しても全部紅葉のせいだと思い出し笑いをしてしまう。